2回目のフジロック3(2019) 音楽の外側

○科学技術
テクノロジーの最先端領域というと、どうしてもお金の集まる軍事や航空宇宙、医療関連になり、我々一般人の触れられる領域から少し離れたところになってしまう。そんな中、エンターテインメントの分野は自動車と並んで数少ない最先端の科学技術に触れられる領域だと思う。 ※酔いながら書いており、異論しか認めません。

今回密かに期待していたのはSoftBank主催の5Gプレサービス体験である。
すでにお隣韓国や米国ではサービスが始まっていて、実は驚くほど速くない、広くない対応エとかの恩恵に対して、端末価格と通信料が高いという不平不満が出ている。
ウェアラブルVR、IoT、4K放送などの名前は聞いたことあるけど、昭和の新旧3種の神器とかと比べて圧倒的に存在感の足りない2010年代の最新科学技術最終章がいかがなものかと心待ちにしていた。

フジロックに参戦したのは2日目と3日目だったので、体験するなら当然ながらどちらかとなる。しかし、2日目は熱帯低気圧の接近に伴い、午後は終始きつい雨が降り続けていたので断念。3日目に体験を試みた。ブースのあるオアシスステージに到着したのは午後11時頃。すでに人だかりができていてとてもじゃないけど体験できそうにはない。一旦後にして、午後3時すぎの人もまばらになってきた頃に体験した。

技術的な詳細は日経XTECHやEngadgetの記事を参考にしてもらうとして、会場で5Gを体験できたコンテンツは2つ。1つはアプリを通じて、会場内各ステージの混雑状況を撮影した映像を5G回線で送信し、リアルタイムで把握できたりするというもの。もう1点は苗場と六本木に設けられたブースでOculus社製Oculus GOというVRヘッドセットを被り、VR空間内でステージを模したスクリーンに映されたライブ映像を楽しみながら、同時にログインしている周囲のアバターとハイタッチできたりできるというもの。微妙。

超高速の通信速度をうりにした低遅延と同時接続性が売りの5Gのコンテンツとしてはそれを最大限に体感できるアプリでは少なくともない。既に去年からフジロックの配信はyoutubeで行われているし、自宅で光回線を利用して音楽体験をするなら通信速度自体に光通信と5Gでは大差がない。結局ヘッドセットに備わったスピーカーから出される音でライブを体験するという点ではリアルに勝てるはずもなく、他のオーディエンスと体感する一体感や臨場感、音圧、もみくちゃになる触感もセンサーやアクチュエータ類の発展がまだまだなのでリアリティには欠ける。技術はすごいんやろうけど、何がすごいんかわからないの一例のように感じた。

でも僕自身は本当は汗をかきたくなければ、雨で濡れたり汚れたりもしたくない。もっと進化して音質もリアリティも増していけば、、、な未来もそう遠くないし、年をとって寝たきりになってもライブを楽しめる時代がやってくる。そういう未来の訪れをわずかばかり感じてきた。そんな5Gプレサービス体験だった。

 

○人

前回の初参戦のときは、twitterやリアルで繋がりのあった友人たちと逢えることが楽しみで楽しみで仕方なかった。ただし、それによって観たかった音楽や食べたかったご飯を蔑ろにして、フェス自体のコンテンツを楽しみ損ねていたところがあったのは否めない。今回はおまけに2日目の天候に恵まれなかったこともあり、逢いたかった人に挨拶することをかなり断念し、フェスを楽しむことに重きをおいてみた。

年々マナーは悪くなっていて、椅子やゴミなどのマナーの問題で世界一クリーンだったフェスティバルからは遠ざかっているという声もよく聞く。そんな中でも逢えた数少ない友人・知人、知らない人だけど忘れられない出会いがいくつかあった。

まずは入場時。現金支払いの手間を省くためにほとんどを交通系Felica(関西在住なのでICOCAです)で済まそうとしていた。カードケースに入れて管理とかではなく、ズボンのファスナー付きポケットの中にスマホと一緒にいれていた。容易に想像できる通りだが、ゲート手前でスマホを取り出した際に一緒にこぼれ落ちた。本来ならここで早々に私のフジロックは終りを告げるはずだったのだけど、そこに音楽の女神一般枠の方が現れた。
「これ落とされませんでしたか??」とすぐさま声をかけて届けてくださったおかげで、その後の丸々2日間となんならそれ以降の生活で差し障りなく過ごすことができた。もはや顔もバンTもどんなだったか思い出せないけど、あの方がいたおかげで今の元気な私がいる。

2つ目はオアシスステージの飲み物ブース。到着前から一緒に行った関東の友人から「ICOCAなんて対応してないよ。使ってる人もみたことないもん」という愛のある煽りを受けながら、ビールを注文。支払いをICOCAでお願いしたところ、「ICOCAってどこのですか??」との返事。早速のフラグ回収ありがとうございます。
2店目でも「ICOCAで」とお願いすると「SUICAですね」の回答。心の折れた私はその後、「支払いは交通系で」とお願いするようになったとさ。

あとは今までにも別のライブで会ったり、twitter上でやりとりしていた方々。
特にフジデビューしたら乾杯しよなってデビュー前から言ってくださっていたかれこれ5年以上付き合いのある師匠とはフィールド・オブ・ヘヴンで再会できてThank you nature。もう一人の師匠とは逢えずじまいで終わるかと思いきや、帰りしの越後湯沢駅でギリギリお会いできて本当に良かった。
ほかにも好きなバンドのオフ会で知り合った大阪のフォロワーさんにもThe Cureの終演後にギリギリ挨拶できたし、同じ県内に住んでいてやりとりしてきたけど、ずっと逢えずにいた結婚したてのフォロワーさんにも逢えて良かった。
本当に数少ない音楽の話が通じる高校時代の友人にも学生時代ぶりに逢って語り合えることもできてよかった。
よかったしか言ってないけど、一昨年の初参戦でも一緒に臨んだ仲間たちともまた苗場の地を踏みしめることができて良かった。なんならあのときは悪天候で乗れなかったドラゴンドラにも乗れたし、もってきてくれたシャボン玉のおかげで令和の空也上人になれたり、キッズたちとたわむれることができた。1人とは土砂降りの雨の中でもレジャーシートを腰の上に巻いて互いを鼓舞しながら最後のDeath Cab For Cutieをみることができた。もう1人とは会場内では目当てが違ってあまり時間を過ごせなかったけど、帰りの新幹線で音楽と人生についてゆっくり話すことができた。本当に本当にありがとう。
残念ながらタイミングが悪くて挨拶できなかった方もいらっしゃるけど、別の機会にまたお話しできるとありがたいです。

 

とまあ瞬く間にかけぬけていった 2日間と少々だった。ある時期に体感する時間の長さは年齢に反比例するというジャネーの法則がある。確かに一昨年感じた時間に比べて、そもそもの参加日数が2/3なこともあってなおさら短く感じた。あと3ヶ月足らずで20代が終りを告げることで、これからもっともっと体感する時間は短くなっていくんだと思う。でも、だからこそ今聴ける音楽を、今逢える人を大切にして1日1日を過ごしたい。

公私ともに色々とごたついてきており、前回のように「みなさんまた来年苗場で」とははっきりと申し上げられない。でもみなさんまたどこかで。願わくば苗場で。